中小企業診断士 実務補習の流れ(第2回、第3回)

技術士

初回記事に引き続いて、2回目と3回目の実務補習を受けましたので、これから実務補習を受けられる方の参考になればと思います。

申込みから当日まで

前回は5日間コースでしたので、7月、8月、9月の5日間コースのうち、7月と9月を狙って申し込むことにしました。

申し込み

中小企業診断協会のホームページから申し込みます。
前回と同様の注意点ですが、
申し込みが殺到するため、申し込み日時ちょうどにアクセスし、すばやく入力を終えること
が重要です。午前10時ちょうどにリンクが表示されるので、時間を確認しながら10時ちょうどにページをリロード(F5)しましょう。初回の申し込みの場合、実務補習用のマイページの作成からとなりますので、受験番号含めて必要な情報を手元に置いて、素早く入力を終えましょう。
2回目以降の方は、実務補習用のマイページにログインした状態で実務補習申し込みのページを開いて待機し、10時ちょうどにリロードして申し込みに進みましょう。
私は1分ほどで申し込みが完了しましたが、
10時10分には申し込みの受付が終了していました

実務補習のメンバーや、その他協会の準会員(二次試験には合格したが診断士登録していない会員)の方に聞くと、

・3月の申し込みで油断していたので夏の実務補習はパソコンの前でスタンバって取った
・会社の打ち合わせが伸びて10時を過ぎ、10時30分に確認したらすでに埋まっていた
・全然予約が取れないのでどうしようかと思っている
・キャンセル待ちをしていたら、たまたま入れた
といった声を聴きました。また、話は脇にそれますが、
15日間の経営診断をすれば要件は満たすため、知り合いの経営者がいれば実務補習は不要
という話も聞きます。
どの方法で登録要件を満たすかは人それぞれですが、実務補習で満たす方は、申し込み日の当日は半日の年休を取り、万全の体制で申し込みに臨むことをお勧めします。

指導員の先生からの連絡

2回目の指導員の先生からは当日7日前の金曜日、3回目の指導員の先生からは当日6日前の土曜日に最初の連絡がありました。
2回目の先生からはchatworkで、会社名(製造業です)と
(1)3期分の財務諸表
が届きました。役割は当日に決まりました。
3回目の先生からはDropboxで、会社名(卸売業です)と
(1)3期分の財務諸表
(2)2年前の経営革新計画
が届きました。役割は、希望を聞かれた上で先生が決めました。
さて、1回目では全員が初回だったからなのか、当日5日前の日曜日に先生からのオリエンがあり、その後もメンバーでZoom打ち合わせをして当日のヒアリング内容の意識合わせをするなど、初日までに色々と取り組んでいたのですが、2回目、3回目ともに、先生からの指示やアドバイスはなく、企業のホームページを見て疑問点を整理したり、業種別審査事典を図書館でコピーして財務指標を比較したりする程度しか、できることはありませんでした。

初日~2日目

1日目(初日)

今回の5日間コースの流れは以下の通りです。
なお、7月、9月ともに、月曜日が祝日(4日目)のパターンで、全体として1日長く(通常は月曜日にプレゼンをして終了だが、今回は火曜日に終了)、2日目の次の日の日曜日と、同じ週の土曜日を家での作業に充てることができるので、時間的には余裕のあるスケジュールでした。
・1日目(金曜日)
午前:実務補習全体の流れ、ヒアリング内容の合わせ
午後:診断先の訪問(ヒアリング)
・2日目(土曜日)
終日:ヒアリング結果等をもとに、SWOTとクロスSWOTを行い、提言の軸を決める
2日目が終われば、次の日から約1週間、家での作業となり
・3日目(日曜日)
終日:各自作成した報告書の報告と修正
・4日目(月曜日・祝日)
終日:修正した報告書の報告と再修正、印刷、提出
・5日目(火曜日)
午前:プレゼン練習
午後:診断先を訪問して報告会

というスケジュールです。

さて、当日は、最初に自己紹介から始まり、今後の進め方・スケジュールの説明、診断先企業の説明、担当決め(2回目)が行われました。
なお、私は、1回目は班長(経営戦略)でしたので、違う役割を経験したく、
2回目は財務
3回目は情報化(&人材が3日目に加わる)
となりました。

なお、1回目では、フレームワークとしてBSC(バランススコアカード)の各視点がそのまま役割となっていましたが、2回目、3回目ともに、事前に指導員が診断先企業に訪問し、どのような視点でアドバイスを欲しいかヒアリングし、その主要な項目をそれぞれ役割として立てていました。
経営者が何を必要としているのか判然としない場合は、全体の網羅感があるBSCなどのフレームワークが有効でしょうし、今後の注力領域が明らかなら、それを軸に具体案を展開した方がいいと思います。

担当を決めた後は、各メンバーから経営者にヒアリングしたい内容を順次挙げていき、重複や漏れがないか確認し、午前中が終わります。

午後からは診断先に訪問です。

ヒアリングした内容はおよそ以下の通りです。

2社目(製造業)財務観点
・(この会社は不動産賃貸業も行っており、財務諸表上分からないことから)
製造業と不動産賃貸業の売上高の比率など、各数値の割合
・商品ごとの原価、利益率 など
3社目(卸売業)情報化観点
・情報の管理方法
・業務フロー
・利用している会計ソフト  など
ちなみに、初回~3回目まで、すべて初日の夜にメンバーと懇親会をして交流を深めました。懇親会のチャンスとしては、遠方の方が含まれる場合は、報告書を提出し終えた4日目の夜が候補となります。

2日目

次の日の土曜日は、おなじみのSWOTとクロスSWOTです。
しかしながら、2回目の指導員は、SWOTをそもそも信用しておらず、

・強みや弱みは切り口によっては逆に弱みや強みになりうる
・現在の状況を分析したところで将来にそれがつながるとは限らない
・めざしたい姿から現状とのギャップを分析してギャップ解消に向けてどうするか考えた方がいい

という考え方でして、ギャップ解消としてやるべきことをメンバーで議論した結果「売上向上」というキーワードが得られ、

強み=「売上向上」に貢献する要因
弱み=「売上向上」を制約する要因

と定義して、その要因を先日のヒアリング内容等から洗い出す作業として、初回同様に、各個人でキーワードを付箋に書き出してホワイトボードに張り付け、似ている内容をグルーピングしてそのグループの名称をつけるKJ法で進めました。

3回目の指導員は、特に細かい指示はせず、メンバーも初回の方がいなかったため、最初からPCの共有ファイル(Googleのスプレッドシート)に、自分の担当のSWOTを記入する、という方法を取りました。

次にクロスSWOTは、初回はあらゆる組み合わせで経営戦略が出てくるか試していましたが、2回目、3回目ともに、ある程度方向性が見えていたので、それに合わせる形でクロスSWOTを組んでいます。

クロスSWOTで得られた経営戦略の目標を主軸として定め、各自のパートは、その主軸を具体的にどのように実現するのか、各自の役割に沿って詳細に記載することとなります。

2日目終了後から3日目前まで(提言内容)

ここから自宅での作業です。ここでの作業で、自分の担当分の報告書をほぼ仕上げます。
報告書への盛り込み内容を簡単に記載します。

2回目:財務

キャッシュフローを確認したところ、フリーキャッシュフローがマイナス、そのマイナスを長期借入金で賄い現金は増加、借入金が膨らんで債務超過寸前の状況

全体としては赤字だが、赤字の主要因は大きな減価償却費であり、投資を抑制すればフリーキャッシュフローはプラス
不動産賃貸業は好調だが、本業である製造業は赤字
駅前の土地の価値が高いため、銀行はまだまだ貸してくれると思うが、債務超過は健全な状態ではないため、自己資本比率を上げる=純利益をプラスにすることを提言

そのためには本業の売上高を上げることが必要で、5年間でこれだけ売上高を出せば、製造業単体で当期純利益がプラスになる

売上高を効率よく上げるためには、利益率の高い製品にリソースを集中させるほうがよく、製品ごとの利益率を把握するためには、チャネル別、製品別の原価把握をする必要がある

という流れで、チャネル別、製品別の原価把握を具体的にどのようにすればよいか、詳細に記載しました。

3回目:情報化(&人材)

3社目では、ヒアリングしたところほとんど情報化がされておらず、紙の帳票、FAX、手書きで運用されていました。取引先がほぼ1社で、取扱製品も限定されているので、その会社からのその製品の受注情報がほぼ年間の売上高ということで、自社で経理をすることはなく、顧問税理士にほぼ任せている状態でした。

しかし、取引先や取扱製品を今後拡大するというビジョンを社長がお持ちだったため、

・経理を自社で行い、取引先や取扱製品ごとに売上高や原価を確認する「管理会計」をどのように実施するか
・営業力を拡大するためにどのような情報化を推進すればよいか
・そのための人的リソースの確保はどのようにすればよいか

について具体的に記載しました。3点目の論点は、最初の私の割り当てにはありませんでしたが、市場を拡大するためにはどうしても今の人員では足りず、そのための人的リソースの確保について言及する必要がありましたが、最初の役割分担に「人材」がなく、3日目の議論で私が情報化とともに引き受けることにしました。
採用をずっとやっていたので、このあたりは他のメンバーより詳しい。

特に、人的リソースの確保については、大手が取り組んでいるような就活サイトの活用などは、この会社では効率が良くないため、実態に合う提案を記載しました。

3日目から最終日

3日目

3日目は、2回目、3回目ともに同じような流れです。

2回目では、Dropboxに入れた各自のパートを順番に読んでいってコメントを書き込んでいくやり方をとり、3回目では、各自のパートを順に発表しながら、全員で気づいた点を指摘するやり方をとりました。

いずれも、コメントを受けた部分を修正し、空いた時間で添付資料を作っていきました。

私の場合は、急遽、人材のパートを引き受けることになったので、急ぎ報告の流れとなる骨格を作っていました。

4日目

ほとんど完成しているので、あとは表記のブレを修正したり、見出しを整えたりといった、見栄えをよくする作業が主となります。

およそ15時を目安に完成させ、キンコーズやアクセア等の印刷サービスに原稿を持ち込むか、オンラインで原稿を送ります。翌日の朝に取りに行きます。

5日目(最終日)

こちらは初回~3回目までやることは同じで、午前中は報告会の練習です。

発表練習後に、コメントを各メンバーから一人ひとりもらうパターンや、気づいたメンバーが発言するパターン、指導員だけコメントするパターンなど、3回ともにコメントのやり方は異なっていました。

ただ、共通する点はいくつかありまして、

何をこれから語るのか、最初に言う
ゆっくりと聞こえる声でハキハキしゃべる
クセ(あのー、えーと)は避ける
全部を言う時間はないので、どこがポイントか整理しておく
力点に重みを付け、強弱(メリハリ)をつける

といったところでしょうか。午前中はこれで終わり、昼食・移動を挟んで、午後からはいよいよ社長を前にした報告会です。この1週間の成果を披露します。

無事に全員の発表が終わったら、社長からコメントを頂き、報告会は終了となります。

さて、終了の証である修了証書が3枚たまったら、必要書類と一緒に中小企業庁に送り、診断士登録されるのを待つのみとなります。

以上となります。最後までお読み頂き、ありがとうございました。